早朝 勉強

早朝の勉強の是非について

早朝の勉強は、はたして効果があるのでしょうか?
このページをご覧になっているかたは、朝の学習に興味があり、もし効果的なら、ぜひやってみたいと考えているのだと思います。そこでメリットとデメリットの両方を列挙し、それぞれを天秤にかけて判断していきましょう。もちろん判断を下すのは、あなた自身です。まずはメリットを挙げてみます。

 

  1. 睡眠の直後なので、脳内が整理されており、頭に入りやすい
  2. まわりの静寂が、最高の学習環境を提供してくれる
  3. 適度な飢餓状態が、扁桃体を活性化する
  4. 時間制限があるために、締め切り効果を期待できる

 

まず早朝の勉強は、起き掛けなので、頭が整理整頓された直後です。
睡眠中には、前日に海馬にインプットされた情報が、重要度に照らして取捨選択され、きれいに整理整頓されます。脳が大切なものと判断した記憶は、海馬で、より強固なものとなったり、側頭葉へ移されて長期記憶になったりします。そのいっぽうで不要と判断された記憶は、海馬から消去されます。

 

そのようにして海馬に、ある程度の「空き」ができるために、早朝の勉強は、記憶しやすいといえるのです。時間がたつにつれて、夜に近づくほど、海馬は満杯になっていきますので、記憶しづらくなるというわけです。

 

朝4時とか5時といった早朝学習は、まわりがまだ寝静まっているために静寂に支配されています。これは日中では、決して味わえない時間帯ですよね。車の音もしない、しかも清澄な空気。この時間帯に勉強することは、当然、集中力を高めてくれます。これは説明の必要はないでしょう。

早朝の勉強は扁桃体を活性化する

早朝に行う勉強法は、大脳辺縁系にある扁桃体という部分を活性化します。
扁桃体とは、聞きなれない言葉かもしれませんが、要は感情や本能が起こる元といったらいいでしょうか。人間の喜怒哀楽をつかさどっています。原始的な動物も、ここはよく発達しており、扁桃体があるために天敵を恐れたりして、命を守れるわけです。

 

人間においては天敵という概念はないかもしれませんが、そのかわり快・不快や好き・嫌いといったように、自分にとっての重要性をはかる尺度として使われます。子犬や赤ちゃんがかわいいと感じるのも、見慣れた友人に親近感を感じるのも扁桃体があるおかげです。いっぽうでネガティブな感情、たとえば嫌いな食べ物があるのも、まわりで騒音がするとうるさいと感じるのも扁桃体のしわざです。

 

また試験前になると、緊迫感が出てきますよね。これも扁桃体が関係しています。扁桃体が活性化すると、すぐそばにある、「タツノオトシゴ」のように湾曲した海馬という部分が活性化します。海馬は記憶を担当しているので、扁桃体の活動が高まると、記憶力が高まることに。これが悪い方向に出ると、忘れたくても忘れられないPTSDやフラッシュバックとなりますが、「適度な刺激」だと勉強に役立つのです。つまり「適度な緊張感」があると、お隣の海馬が活性化して、集中力や記憶力が高まるわけですね。

 

さて早朝の勉強においては、ブドウ糖が不足しています。前日の夕食(あるいは夜食?)から何も食べていないのですから、体はプチ飢餓状態。そのため脳にはブドウ糖がやや不足しています。これが危機状態と判断され、扁桃体が活性化します。すると、お隣の海馬が活性化するわけです。この時間帯を活用しない手はありません。もちろん空腹時が有効なのですから、夕食前の時間帯を利用するのも手です。

 

そのほか早朝の勉強は、時間が限られています。これが心理学でいうところの「締め切り効果」を生み出します。中学や高校の中間・期末テストの前には、いつもよりもテスト勉強に集中できるものです。これは試験前ということもありますが、期限が限られているために扁桃体が活性化し、集中力ややる気が高まったと考えることもできます。朝は1時間程度、長くても2時間程度しか勉強できません。そこで最大限の集中力が発揮され、質の高い学習時間になるのです。

 

ただし時間制限を設ければ、このように集中力が最大化されるのですから、べつに朝早くでなくてもいいという考えかたもできます。昼や夜であっても、1時間だけ、あるいは2時間だけ勉強すると決める。
その時間を超えたら、どんなに中途半端でもストップする。そのように決めればいいだけです。

早朝勉強のデメリットとは?

以上、早く起床して勉強することのメリットについて考察してきました。
脳内の環境にしても、周囲の環境にしても整っているので、とくに脳科学を知らない人でも、しぜんと適切な勉強環境になります。しかし、それぞれの効果を分解して考えてみれば、昼や晩に勉強したとしても、同様の心理効果を導き出すことはできます。それは前述したとおりです。

 

さて、早朝学習のデメリットも考えないといけません。ザッと列挙すると、以下のようになります。

 

  • 夜が遅いと睡眠時間が削られる
  • そうなると、睡眠中の記憶の整理や定着に支障が出る
  • 日中に眠気が生じて、昼や夜の勉強効率が低下する
  • 体の健康を害して、かぜをひきやすくなる

 

朝早く勉強することのメリットだけに目をむけると、なんだか素晴らしい受験勉強法のような気がしますが、このようにデメリットも列挙すると、また違った様相を呈してきます。物事にはメリットともにデメリットもあるわけです。たとえば、一般的に健康によいといわれる食材であっても、健康に悪い側面ももっていたりすることと一緒です。

早朝に起きると睡眠時間が減少する

もちろん前日に早めに就寝した場合は、この限りではありません。
朝5時に起きるために、夜10時や11時に寝る。これなら十分な睡眠時間でしょう。そうではなく、朝5時起きなのに、夜は12時や夜中の1時、2時まで起きている・・・こうなると問題になります。

 

成人の場合、十分な睡眠時間というと、だいたい6時間だといわれています。
もちろん長時間睡眠者や短時間睡眠者がいるので、人それぞれではありますが、6時間の睡眠がひとつの目安となります。6時間以上寝れていないと、前日に学んだことが、うまく記憶に定着されないと脳科学ではいわれています。

 

睡眠中は、夢を見ているとされるレム睡眠のときも、大脳を深く休めているとされるノンレム睡眠のときも、どちらも記憶の整理を行なっている・・・これは今や脳科学の常識となっています。従来は浅いレム睡眠時にだけ、記憶が整理整頓されていると言われてきました。しかし脳細胞の活動を低下させるノンレム睡眠のほうが、むしろ記憶の整理には向いているといわれています。電気工事においても、電源を切ってから配線のつなぎ替え作業をしますよね?電流が流れている状態では、やりにくいからです。

 

早朝勉強によって睡眠時間が減少すると、睡眠中の記憶の整理や定着が不完全になります。
そのうえ、日中の勉強にも身が入らないという最悪の展開になります。よく短眠法とか短眠術、3時間睡眠とかによって、日中の時間を増やせば、資格試験の勉強時間が増えると主張する人がいますが、まったくナンセンスではないでしょうか。量より質が大切です。

 

睡眠時間が短くなれば、日中は眠気、睡魔とのたたかいになります。
予備校の講義を聴いていても、右から左へと筒抜け状態になります。テキストや教科書を読んでいるつもりでも、何度も同じ箇所を読んでしまったりして、ぜんぜん進んでいかないことでしょう。過去問を解いて考えているようでも、ほかの関係ない考えが浮かんできて、時間だけが経ち、気づいたらまったく勉強していなかったり・・・。睡眠不足になると脳が働かないので、ぼーっとしてきて、以上のような状態になりがちです。

 

早朝に勉強するのなら、前日に早く寝て、6時間以上の睡眠をとる。これが鉄則です。

朝が早すぎると健康を害する

健康法の一環として、よく早朝の5時に起きることを推奨している人がいますが、かならずしも健康によいとはいえません。健康に好影響を及ぼすのは、もともと朝型人間の体質のかたか、あるいは前日に早く寝る習慣がある人だけです。「朝に起きることがいいらしい」という一側面にだけ注目して、夜に遅く寝て早朝に起床すれば、健康を害するのは当然といえます。

 

ふつうのサラリーマンでも、夜おそくまで起きていて、翌日は5時起き、6時起きなんていう人も多いでしょう。そうなると、それはストレスとなり、ストレスホルモンのコルチゾールを分泌させます。これはストレスに対処するためのものですから、筋肉を分解してブドウ糖にし、血糖値を上昇させます。これが慢性的につづくと、糖尿病や動脈硬化にまでつながりかねません。またコルチゾールは血圧まで上げるので、高血圧症の危険もあります。これらが生活習慣病へと移行していくわけです。

 

また早起きしすぎると、1日中、コルチゾールレベルが高い状態がつづくことがわかっています。
つまり1日中、血糖値、血圧が高くなるのです。こんなの不健康です。OLや女子高生だったら、肌荒れになるし、ダイエットの敵ですよね。

 

コルチゾールの弊害はそれだけではありません。
コルチゾールが慢性的に分泌されると、それは脳の海馬に悪影響を与えます。海馬は短期記憶を長期記憶へと作りかえる変換装置。つまり、睡眠を削ってまでの早朝勉強は、海馬の働きを低下させるので、記憶力が鈍ってくるわけです。頑張っているのに、なかなか偏差値がアップせず、模試の判定もDやEランクのままなので、やる気やモチベーションも下がってくることになります。

 

睡眠時間が減ると免疫力も下がるので、かぜにもかかりやすくなります。受験勉強中に風邪や重い病気にかかって、長期間勉強できなくなることは避けたいところです。

 

以上のメリットとデメリットを天秤にかけると、睡眠時間を確保できる自信のあるかたのみ、自分は朝型人間だと思えるかたのみ、早朝学習をしたほうがよさそうですね。

 


 

 

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後記

朝に勉強することは多くの人が関心を持っているようです。早朝勉強会を東京で行う人も見受けられます。朝の勉強はメリットとともに弊害もありますから、本文を参考にして、最終的な判断は自分で行うようにしましょう。脳科学的にいうと、早朝ではなくても午前中の勉強でも十分効果があるようですから、時間が取れる人は、早朝にこだわらずに午前中に学習するような習慣をつけるといいかもしれませんね。一浪や二浪といった浪人生は、時間がある場合がありますからオススメです。また主婦のかたで資格試験を目指している場合も同様です。ただし、あくまで自分自身の生活リズムが大切です。夜型なのに、無理して早起きすると、ストレスホルモンが分泌される結果となります。そうするとどうなるかは、本文中に記載したとおりです。
朝の勉強は短期的には効果がありますが、長期的にみるとデメリットが目立ってきます。一時的に活用するにとどめたほうがよさそうです。テスト勉強を朝に行うという方法もあります。よく徹夜とか一夜漬けばかりが注目を浴びますが、しっかり睡眠をとって、記憶が整理された直後のほうが、脳に入りやすくなります。テストの日だけ早朝勉強をするというのも面白そうです。
本文で、早朝の学習は、記憶が整理された直後なので、記憶しやすいと書きました。でも、これはデメリットにもなり得ます。人は朝から昼、夜と時間が経過していくなかで、海馬に記憶を蓄積していきます。勉強したことだけではなく、人と話したこと、歩いているときに目にした光景、テレビ番組の内容、食べたものの味、考えたことなどなど・・・。五感を通して、数限りない情報が脳内に入力されます。またそれを素材として、前頭葉(ワーキングメモリ)で調理します。すると最初のころに入力した情報は、あとから入ってきた情報によって消去される、と考えることもできます。初めのほうに入れた知識は押し出されるというわけです。そう考えると、晩や夜に勉強したことのほうが、脳内に残りやすいかもしれません。夜に学習したあと、そのまま睡眠に入れば記憶の干渉を受けずに、脳内で整理され定着されやすいというメリットもあります。朝に勉強する場合は、そこで学んだことを夜にもう一度復習すると、記憶の定着にはいいかもしれませんね。

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